やらないより、やった方が良いのはわかっていても、実際何に投資してよいかわからないのが資産運用。「運用」という言葉が悪いんでしょうか?
どうも、小難しく感じてしまいます。
「老後のお金を貯める」と言い換えれば、「やらなければ」という感情も出やすくなるのではと個人的に思いますが、兎に角、歳をとって惨めなのはお金がないこと。
今回は、日本人の金融資産の現状と、投資(資産運用)しないリスクについて書きたいと思います。
【徐々に動き出す日本人】
日本人は、貯金が好きな民族だといわれています。
わたしも幼少のころから、お金の大切さ・貯金することの正当性を親から植え付けられた部類の人間。
これまでは、何の疑問を持つことなく、兎に角、お金は貯金するものという考え方しかなく、それが正しい事だと思っていました。
しかし、金利が数%もあった昔ならいざ知らず、現在、銀行等の金融機関では金利がほとんど付きません(0.001%)。
100万円預けて、1年後に貰えるのは10円ですか・・・。
ただ、こんな悲惨な状況でも、日本人の貯金好きは変わりません。
2020年3月末時点の家計の金融資産の、米国・ユーロ地域との比較をしてみると・・・
圧倒的に、日本人は現金・預金の比率が高いですね。
勿論、現金で資産を持つことは安全ですし、学生時代に金融リテラシー教育を受けることのない日本人にとっては、何もしないことが最善の策と考えるのは仕方のないことかもしれません。
しかし、時代は変わり、日本経済は低迷、数十年にも及ぶデフレ・不景気が続いています。
賃金は一向に上がらないうえ、2019年には物議をかもした金融庁から現実が突き付けられます。
そう、
老後2,000万円問題
です。
生活スタイルがそれぞれ違うので、一概にこれだけの金額が必要とは思えませんし(2000万円では足りないという人もいます)。
お役人が示した「一般的な平均世帯モデル」というのが、そもそも時代に即しているのか?という疑問は拭えず、金額が独り歩きしている感は否めませんが。。。
とはいえ、この金融庁からの発表は、結果的に多くの国民の「資産を増やす具体的行動」を後押ししているようです。
下表は、2019年と2020年6月時点での一般NISA、積立NISAの口座開設数の推移ですが、どちらも大きく増加していることがお分かりいただけるでしょう。
2019年 | 2020年6月 | 増加率 | |
一般NISA | 2,212,389 | 5,945,764 | 約2.7倍 |
積立NISA | 396,955 | 1,329,577 | 約3.3倍 |
※参考:日本証券業協会HPより一部参照 (稼働数ではなく、あくまで口座開設数)
現在、年金の支給開始年齢は原則65歳。
60~70歳の幅で、繰り上げたり遅らせたりできますが、2022年4月からは60~75歳までの幅に広がる改正が行われています。
厚生労働省は、今のところ「受給開始年齢自体を引き上げることはない」と言っていますが、これはあくまで、現時点での話。
普通に考えれば、受給開始年齢が原則70歳に引き上げられ、65~75歳の間で受給開始年齢に幅を持たせるようにする布石でしょう。
年金制度の破綻 = 国家の破綻 を意味するものでもあり、これは流石に非現実的かもしれませんが、年金額が先細りすることは明らかなので、多少なりとも資産を増やす努力は必要と感じている人が多くなっているというのが上表からもわかります。
資産を運用するという考え方が希薄な日本人も、いよいよ見て見ぬ振りはできなくなってきているのかもしれませんね。
【時間的リスク】
海外では、お金を稼ぐ事に熱心になる(野心を持つ)のは、むしろ当たり前の事。
野心があることが、世界を豊かにしてきたのは事実であり、この野心がある限り世界経済は発展し続けます。
投資信託で何を買うか迷ったときに、世界の株式に投資できる商品を選択した方が良いと言われるのは、分散という意味での効果もありますが、全体としてはプラス成長することが基本にあるからです。
しかし、日本ではなぜかお金のことを話すと怪訝な目で見られることが多くあります。
横並びが好きな日本人にとって、突出した野心を出すことはタブーなのでしょうか。
ただ、国の懐事情が思わしくない昨今、野心剥き出しとまではいかなくても、何かしらのお金を得る行動をしていかないと将来の生活が不安だと感じている人は増えているように思われます。
※年配者が、あり得ない利回り商品に手を出して騙されることからもわかります
因みに、お金を稼ぐ方法というのは、下記の2つしかありません。
1. 労働市場で自分が働く
2. 金融市場で金融資本に働いてもらう
これまでの日本人は、ほぼ「1」しか行ってきませんでした。
これだけで生活が成り立っていたからでしょうか。
しかし、これからはもう1つのお金を稼ぐ方法である「2」をやっていかなければならないと思います。
いくら雇用期間を70歳まで延長するように国が経済界に圧力を掛けても、年を取ると体力や判断力は落ち、結局安い賃金で過酷で単純な仕事をする仕事にしか就けません。
そもそも、雇用されるのかという問題も有ります。
昨今は、ロボット市場が拡大しており、人手自体不要になってきています。
10年後に食えなくなる職業(仕事)なんて記事や本も一時期話題になりましたが、イノベーションによって今の仕事を続けられなくなるリスクは十分に起こり得ます。
しかも、労働市場で働くことには時間的限界あります。
副業などが流行っていますが、獲得できる金銭には限界があり、行きつくところは「2」にるように金融資本に働いてもらう方法、つまり自分のお金を資産運用するしかうまく増やす方法はありません(勿論、資産運用は資産が減るリスクもありますが・・・)。
結果、長い目で見ると金融の知識をつけて資産に働いてもらうのが賢明と言えます。
【物価上昇リスク】
モノやサービスの値段の動向を知る一つの指標として消費者物価指数(CPI)というものがあります。
これは、毎月総務省が発表しているのですが、この指標は消費者の家計支出の中から重要度が高いものから順に選び、5年ごとに見直されるようになっています。
下記は、2020年10月の状況です。
● 生鮮食品を除く総合指数(コアCPI) 101.3
● 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数 101.8
※2015年を100とする(総務省資料より一部参照)
総合指数でみると、前回調査(5年前)より1.8%上がっていますね。
政府・日銀は、インフレ目標を年2%としており(いまだ達成の見込みはありませんが)、国を挙げてインフレ方向に進める施策が今後も変わらないことを考えると、徐々にとはいえ何もしない(投資などお金が減るリスクを取らない)事は、確実な資産の目減りを招きます。
補 足
世界一の経済力を誇るアメリカはじめ、ヨーロッパの主要な国の消費者物価指数はこんな感じです。
アメリカ | ドイツ | イギリス | フランス | |
2015年 | 0.1 | 0.3 | 0.0 | 0.0 |
2016年 | 1.3 | 0.5 | 0.7 | 0.2 |
2017年 | 2.1 | 1.5 | 2.7 | 1.0 |
2018年 | 2.4 | 1.8 | 2.5 | 1.8 |
2019年 | 1.8 | 1.4 | 1.8 | 1.1 |
※対前年比 労働政策研究・研修機構HP参照
これを見ると、いかに日本の物価が上がっていないかがわかりますね。。。
【消費税増税リスク】
日本では、1989年(竹下内閣時)に初めて消費税が導入されました。
そこから、
● 1997年 5%
● 2014年 8%
● 2019年 10% ※飲食料等、一部は軽減税率適用で8%
へと、計3回増税されています。
財務省は、この消費税の引き上げ分は、すべての世代を対象とする社会保障のために使うと宣言していますが、今後もしばらくは、少子高齢化が続き、社会保障費が増え続け、国の借金である赤字国債が膨らみ続けるのは必至で、社会保障以外にも財源として使用できるように法律を改正する可能性もゼロではありません。
勿論、国会議員には選挙がありますから、選挙が近づくと消費税増税の類は封印するでしょうが、他の先進国に比べて経済成長率の低い日本にとって、財源を確保するには国民から徴収するしかありません。
そういえば昨年、IMFが日本経済について分析した報告書を公開してました。
そこには、医療・介護で増える社会保障費を賄うためには、
2030年までに消費税率を15%まで引き挙げる必要がある
と書かれているようです。
更には、2050年までには20%まで増税が必要だとか。
2050年には、高齢化率が約40%に達すると予想されているので、当然と言えば当然でしょうか。
生産年齢人口も減るわけですから(2050年には約51%になる見込み)。
いずれにしても、消費税は今後も確実に上がっていくでしょう。
【まとめ】
OECDによると、日本人の賃金は、1996年を基準(100)とすると、30年後の2016年に89.7に下がっているとか。
一方、他の国はというと軒並み上昇しています。
アメリカ 115.3
ドイツ 116.3
デンマーク 123.4
イギリス 125.3
フランス 126.4
オーストラリア 131.8
先進国であるはずの日本のサラリーマンの給料は、欧米各国に比べて、この数十年右肩下がり。
これが、今の日本の現実です。
これでも、皆さんは、投資(資産運用)もせず、老後の資金を蓄えられると考えますか・・・?